人類の人口の1/5が火星に移住し、15年が経過した西暦2315年に、火星内で初の世界大戦が起こった。大戦後に火星の人口は半分に激減し文明も後退した。

この過ちを繰り返さぬよう、火星国連は武器の開発・所持、暴力を禁止にした。流通する銃や剣はすべてがダミーとなり武器はファッションアイテムになった。

また、ほとんどのスポーツが人体の接触が暴力を想起させると禁止になり人々の娯楽も激減。そんな中、新たな娯楽として登場したのが「BusterBall」だった。球体型のマシンに乗って行われるレースで、その頑強な機体により搭乗者の安全が約束されているレースだった。

西暦2355年、終戦から40年が経ち、「BusterBall」もこの40年のうちに少しずつかたちを変えていった。 単純に順位を競うだけのレースが、暴力を知らない世代が機体同士のぶつかり合いに大熱狂し、レースはいつのまにかに様々なルールでマシン同士がぶつかりあうバトルへと変貌を遂げた。機体に守られた搭乗者の安全が保証されているという理由と、娯楽を残すことで国民のフラストレーションをコントロールするという目的のもと、「BusterBall」は、世界で唯一の暴力とギャンブルが許されたスポーツイベントとなったのだった。

「BusterBall」のシーズン優勝者は、全世界の国民から称賛を受けるほどの名誉と、一国が買えるほどの賞金とを手に入れることができる。ある者は貧しい自分の国を救うため、ある者は不治の病にかかった家族の治療費のため、またある者はただその暴力性に酔いしれて、世界各国からのこの競技に参加するのであった。